就業規則の構成と必要記載事項

就業規則の必要記載事項

就業規則を作成する際に知っておかなければならない基本的知識として、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」があります。
「絶対的必要記載事項」とは、就業規則を作成する時には、必ずその内容を盛り込まなければならないとされているものです。



これに対し「相対的必要記載事項」とは、必ず記載しなければいけないものではありませんが、会社がここに書かれている制度を設け、従業員に適用させようとする場合には、記載しなければいけないものとされています。



これ以外の項目、例えば会社の経営理念、経営方針、社是・社訓、目的等の法律の要請に基づかないものについては他の法律に反しない限り記載してよく、「任意記載事項」と呼ばれることがあります。


自社で就業規則を作成しようとする場合は、ゼロから作るのではなく、なんらかのモデル就業規則、雛形を基に自社なりのアレンジをしながら作っていくことが多いと思います。
例えば各労働局のホームページでは、最新の法律に準拠したモデル就業規則をダウンロードすることができますが、これらの就業規則は役所が作成しているだけあって、法律的な部分についてはまったく問題のない(ただしまれに古いものがダウンロード可能なまま残っている場合があり、この点は注意が必要です)ものですし、構成もごく標準的、また必要記載事項についてもきちんと網羅されています。
 まったくのゼロから1条文1条文を積み上げていって自社オリジナルの就業規則を作成するというのはひとつの理想ではありますが、作成の労力やコストを考えると特に中小企業にとっては現実的いえません。できる限り会社オリジナルの就業規則を作成しようとする場合であっても、こうした雛形やモデル就業規則をいくつか用意しておくとやはり便利でスムーズに進みます。
「雛形を基に作成するのでは良い就業規則はできない」などと記載されているホームページも見かけることがありますが、インターネット等で無料でダウンロードできるようなモデル就業規則や雛形を用いても、自社で良い就業規則を作成することは可能です。ただし、専門家の手助けを借りるのと比べ手間といくつかのコツ、またある程度の勉強は必要になるものと思っておいたほうがよいでしょう。


 モデル就業規則はあくまでも「モデル」ですので、企業の考え方によっては(法律上必ずしも必要でない)「余計な条文」が多く含まれていたり、従業員とのトラブルを防ぐ「契約書」として見た場合のリスクヘッジのための条文については充分ではない可能性もあります。
 これらを、1条文ずつ「必ず盛り込む必要がある条文(絶対的必要記載事項)なのか」「自社の制度に照らして必要な条文か(相対的必要記載事項)」「それ以外の独自の条文か」など区別をした上でアレンジを進めていくとよいでしょう。

絶対的必要記載事項以外は、それぞれリスクとメリットを踏まえて決定

就業規則で定める従業員の労働条件の水準は、労働基準法を下回ってはならないということになっています。労働基準法は、労働者(従業員)の労働条件の最低水準を定めたものですから、まず就業規則の最初のたたき台としてこの「最低限の労働条件」のみが示された就業規則を作成しようとしたとき、(誤解を恐れずにいえば)その内容は基本的に労働基準法の条文内容と同じになるはずです。
しかし、インターネット等で無料で入手可能な雛型には、この最低限の基準を超える内容や、法律上必ずしも要求されていない項目も含まれているのが通常です。
さて、下の例は、ある無料で入手可能なモデル就業規則の構成です。



上記の項目のうち、「休職」に関する事項や「特別休暇」に関する事項、また「表彰」に関する事項などは、就業規則の相対的必要記載事項(そのような制度を定める場合には就業規則に記載しなければならない)とされているのみであり、必ずしも必要のないものです。
 これらは、本来「労働基準法では求められていない制度だが会社が労務管理上の目的から独自に定めているもの」のはずです。法律を超える制度をわざわざ設けるのであれば、「その制度を設けることによるメリット(従業員の帰属意識の向上、モチベーションの向上その他)」が「デメリット」を上回るということがきちんと検討されているべきでしょう。


例えば「特別休暇」は、従業員の慶弔事によって、一定期間の有給休暇を認めるもので、ほとんどの会社で採用されていますが、上記必要記載事項の区分でいえば「相対的必要記載事項」であり、必ずしも必要のないものです。
 特別休暇を与えれば、当然休暇日の代替要員も必要になりますし、賃金も発生します。そのように会社が一定のリスクを負う以上、それを超える労務管理上のメリット(例えば従業員の帰属意識の向上、離職率の低下、モチベーションの向上など)がなければ制度を正当化することはできないでしょう。しかしながら、メリットどころか休暇取得をめぐって労使トラブルになっているケースすら見受けます。
 これはなにも「特別休暇はないほうがよい」ということを意味しているのではありません。あたかも当然の権利のようになってしまい、衛生要因(モチベーションのアップでなく、ないと不満を生じる要素)と化している制度については、その制度に本来期待されるべき労務管理上の効果をきちんと果たせるような制度運用、また規定の書き方に改めなければならないということです。

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