章立て例とその解説2

章立てとそれぞれの考え方(続き)

モデル就業規則構成例

6 賃金

「賃金」は従業員にとって最も重要な労働条件の一つといってよいでしょう。絶対的必要記載事項であるため、当然に省くことはできません。しかし、必ず記載するといっても従業員の賃金は一人異なるのが通常ですので、金額そのものについてまで記載を求められるわけではありません(労働基準法上も「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」とされているのみです)
 賃金の決定は、それが最も重要な労働条件であるがゆえに、労務管理上もきわめて重要です。どのような形態(月給制、日給月給制、年俸など)で支払うのかといったことも、会社の考え方や形態によってそれぞれ異なるでしょうし、どのような要素(職能、職位、勤続年数)によって賃金の額が決定するかは、従業員のモチベーションや生産性にも直結してくるといえます。 これは当然ながら会社の評価制度や人事制度とも矛盾のないものにしなければなりません。こうした要素を満たす規定はどうしても一定の分量になるため「賃金規程」「給与規程」といった形で別規程にすることが一般的です。賞与も賃金の一部であり、給与規程に併せて記載されるのが通常ですが、賞与は相対的必要記載事項であり、義務ではありません。原則的には労働に対する対価は月次(等)の賃金によって完結しているのであり、それを超えて賞与を支給することによる会社のリスクとメリット(きちんとメリットが上回るといえるか)、また支給するのであれば、どのような要素に基づいてどういう形態で支払うのがもっとも労務管理上効果的であるか、充分な検討を行った上で記載しましょう。

7 定年・退職・解雇

「定年・退職・解雇」の章には、一般的に名称の通り定年、退職、解雇、また定年後の再雇用等について記載します。
解雇とは一般的に会社側の意思によって一方的に雇用契約を解除することを指し、「普通解雇」と「懲戒解雇」がありますが、この章で書かれるのは一般的に「普通解雇」に関する規定です(懲戒解雇に関する規定もここに書くこともあります)
 解雇の規定は就業規則の絶対的必要記載事項とされているから、というだけではなく、会社のリスクヘッジの観点からも非常に重要な規定になります。
 解雇については、労働契約法第16条において、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされており、その事由を就業規則で明確に定めておかなければなりません。
ここでいう、 「客観的に合理的な理由」とは、解雇事実が就業規則に定められた解雇事由に該当するかどうかということであり、このことを踏まえればできる限り網羅的に、また従業員にも理解できるよう明快に記載されている必要があります。ただし、だからといってなんでもかんでも書けばよいというものでもありません。解雇の事由は 「社会通念上相当である」ことが必要とされており、この点で例えば「遅刻三回で解雇」といった規定は無効とされる可能性が高いといえます。このあたり、どの程度のことなら「社会通念上相当」とみなせるかについては、過去の判例等を参照する必要があるためなかなか敷居の高いところではありますが、会社のリスクヘッジという意味では大変重要な規定になりますので、必要に応じて労働基準監督署や外部の社会保険労務士の意見も参考にしつつ、きちんとした規定にしておきたいところです。
また、解雇を行う場合の手続が労働基準法に則って適正に行われることも解雇が有効とされる条件となるため、きちんと記載しておきましょう。
 この他、退職となる事項(定年なども含む)や退職時の清算、手続きなどについてもこの章に記載します。

8 表彰・懲戒

「表彰・懲戒」の章は、一般的に表彰や懲戒について、その内容や手続きを規定します。表彰とは、例えば永年勤続して他の模範となる場合や業務に有用な考案や発明をした場合などに行うものです。
この表彰につては、相対的必要記載事項であり必ずしも記載する必要のないものですが、モデル就業規則にはほとんどの場合記載されています。中小企業においては、規定されていても実際にはなにも行われていないといったことも多いものですが、表彰の制度は比較的安価に会社の一体感の醸成やモチベーションの向上に役立つものであり、ぜひ活用したいものです。しかしながら、もし会社の負担になる等の理由で表彰を行わないのであれば削除してしまうほうがよいでしょう。「就業規則」は従業員との契約書であり、規定しておきながら実際にはその通りに運用しない、ということでは、規程そのものへの信頼感を損ないかねません。表彰の項目に限らずいえることですが、「就業規則」のなかで約束(規定)したならばきちんとその通りに運用する、そうでないならばはじめから書かない(絶対的必要記載事項についてはそうはいきませんが)ということを徹底することが、就業規則をきちんと役に立つものにするためのコツだといえるでしょう。


「懲戒」については、職場の秩序や風紀を守るため、違反者に対して不利益措置課すもので、就業規則上にその対象事由、種類及び程度、手続きについて具体的に記載しておく必要があります。こちらも解雇と同様、客観的に就業規則に規定されており、かつその内容が社会通念上相当なものである必要があります。
 解雇についてもいえることですが、こういった従業員に不利益を及ぼす事項については、あらかじめ「こういう場合には解雇する」「こういう場合は懲戒する」と事前に明らかになっていなければ、「そんなこと聞いていないいよ」と納得性が得られず、トラブルの元になるのは当然ともいえ、誤解を与えたり、恣意的に運用されることのないような明確な規定にしておきたいものです(なおこうした原則を罪刑法定主義類似の諸原則といいます)

9 雑則

「雑則」の章には、安全衛生や教育研修、損害賠償など上記の章立てに分類されないような事項について記載します。(もちろん章立てはどのようにしようと自由ですので、分量によっては別章としてもかまいません)
 たとえば業種によっては交通事故の場合の取り扱いを規定しておくなど、業種・業態、や企業規模等により、それぞれの企業に必要と思われる項目はもれなく規定しておきましょう。

まとめ

全体を通じてのポイントとしては就業規則が「読まれる(それもトラブルになったときや問題が起きたときほど読まれる)もの」であることを踏まえ、読む側の立場に立って分かりやすい規定を心がけることが重要になります。また従業員に就業規則にかかれていることを「守ってもらう」ためには、当然会社側も「書かれていること(約束)を守る」「守れないようなことは初めから書かない(絶対的必要記載事項を除く)」といった姿勢が求められるといえるでしょう。

就業規則作成まとめ

次のページからは、実際の規定例をいくつかみていくことにします。

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